無料でCAD技術が手に入る!ハローワークの職業訓練とは

退職を機に、未経験のCADオペレーターへの転職を検討している人や、転職やキャリアアップのためにCADの技術を学びたいと考えている人は多いのではないでしょうか。そんなときに役立つ手段の1つが、ハローワークの職業訓練で受講できるCAD講座です。ここでは、公的職業訓練で身に付くCAD技術と、受講期間の給付金などの行政サービスについて紹介します。

そもそも職業訓練とは

求職者支援訓練と公共職業訓練の違い

公的職業訓練には、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。両者の違いは、受講者が雇用保険を受給しているかどうか。「公共職業訓練」は雇用保険を受給している人を対象としています。一方、雇用保険の適用がなかったり、受給が終了しているなどで雇用保険を受けられない方のための講座が「求職者支援訓練」です。どちらも訓練を通じてスキルアップを図り、ハローワークの就職支援と合わせて、一人ひとりの早期の就職を目指します。

短期集中講座にじっくり学ぶ長期コースも

職業訓練中に受けられる手当とは

雇用保険を受給している人が公的職業訓練を受講する場合は、失業手当とも呼ばれる「基本手当」のほか、受講に必要な費用として「受講手当」「通所手当」などが支給されます。「基本手当」は訓練期間中に所定給付日数が終了しても、訓練の終了する日まで延長することが可能です。
※「基本手当」の所定日数の延長は、原則として所定給付日数内の支給残日数が一定以上ある場合のみ認められます。

雇用保険の受給資格のない「特定求職者」に認定された方は、「職業訓練受講給付金」を受け取れる可能性があります。これはある一定の条件を満たす場合、求職者支援制度の下、月額10万円の「受講手当」に加え、訓練に通うための交通費である「通所手当」、寄宿費を負担する「寄宿手当」が支給されるものです。ただし特定求職者であっても、職業訓練受講給付金が支給されるとは限りません。まずは本人収入や世帯収入などの支給要件を確認し、ハローワークに相談しましょう。

職業訓練を受講する際の注意事項

原則として無料の公的職業訓練は、「離職者」でなければ受講できません。そこで受講のタイミングに合わせて、退職時期を調整する必要があります。また週所定労働時間が20時間以上の方も在職者と見なされるので、アルバイトやパートの労働時間についても注意が必要です。

忘れてならないのは、訓練日やハローワークへの所定来所日に「やむを得ない理由」以外で欠席できないということ。また求職者支援制度の職業訓練受講給付金を受けている場合は、1回でも欠席すると受給資格を失う可能性があります。無理なく通い続けられる距離であるか、期間が適切かどうかも、ハローワークの職員にあらかじめ相談することをおすすめします。
※「やむを得ない理由」での欠席(遅刻・早退・欠課を含む)の場合も、8割以上の出席が職業訓練受講給付金支給の条件となります。

CADの基礎から応用、業界の必要知識まで学べる

職業訓練の講座は大きく分けると、CADのオペレーション技能を習得して建築業界を目指すコースと、機械分野ほか製造業で必要な技能を得るためのコースの2つとなります。どちらのコースも製図全般の基本ルールから学び、一般的なCADソフト基礎操作から応用の操作機能までマスターすることができます。訓練卒業時にはCADシステムを利用した製図補助業務の担当者や、CADオペレーターとして実務で活躍できるレベルを目指します。

職業訓練で身に付くCADの技能とは

住宅の設計や建築関連の図面作成に関する知識と技能を学ぶ「建築CAD科」では、建築製図に必要な学科と実技基礎知識、そしてCAD操作を習得します。取得可能な資格は、「建築CAD検定試験3級」。CADシステムを用いて、与えられた図面から正確にトレースする力を備えているどうかが問われます。

商品の製造や開発を行う企業で不可欠となっているツール、3次元CAD。「3次元CAD科」では専用ソフトを使用し、部品の作成、組立、2次元図面への変換、解析などの基本操作を中心とした実習が行われます。また機械製図、機械工学概論、工業数理など機械分野で必要とされる内容を学習し、機械設計をアシストできる知識および技能を習得します。資格としては自動車、機械メーカーの設計士への道も開ける3次元CAD利用技術者試験の1級・準1級、設計補助、営業・管理などの関連業務に役立つ同試験2級の取得を目指します。

CAD技術の需要とともに広がる多彩な講座

CAD講座を受ける場合に必要なもの

講座の内容によって異なりますが、実務指導のあるコースでは、テキスト(有料)、三角スケールなどの文具のほかに、作業着、運動靴などが必要です。またCAD技術をさらに高めたいのであれば、自宅で復習するためのコンピューターに、CADのソフトが必要となるでしょう。ただしCADシステムを導入するとなると、高スペックのパソコンが必要です。さらに、CADソフトは2次元にするか3次元にするか、高い機能と操作性を誇る専用CADと標準的な汎用CADのどちらを選ぶかで金額も大きく違います。中には無料のソフトもあるので、自分の技能や就職先の希望に合わせて導入を検討してください。

職業訓練を受けるまでの手順

雇用保険受給資格の有無で異なる申請方法

雇用保険の受給資格がない方は、まずはハローワークで求職の申し込みをします。求職申込書の記入に担当者との職業相談が行われ、「求職者支援制度」についても説明を受けるでしょう。雇用保険の受給資格がある方の場合は、以前の仕事を退職して雇用保険の失業手当を申請した時点で求職の申し込みが完了します。どちらの場合でも求職者には「ハローワークカード」が提供されます。このカードはハローワークで相談をする際に必ず必要になるので、大切に保管してください。

ハローワークでしっかり情報収集を!

職業訓練には、CADを学べる講座だけでも複数あります。受講したい訓練コースが決まっていない場合、ハローワークの掲示板やパンフレットで、それぞれの講座の内容や取得できるCADの資格など詳しい情報をチェックしましょう。またハローワークの窓口で職業相談をすると、希望の職種に合った訓練コースを提案してくれます。中には訓練を見学できる施設もあるので、事前に自分の目でどのような技術を学べるのか確認するのも良いでしょう。

希望の訓練コースを受講するためのポイント

職業訓練には、CADを学べる講座だけでも複数あります。受講したい訓練コースが決まっていない場合、ハローワークの掲示板どの訓練コースを受けたいのかが決まったら、職業相談で「なぜ自分にその訓練が必要なのか」「CADの技術を身に付けてどんな仕事がしたいのか」を相談員に説明しましょう。スキル不足を補いたいという目標や資格を取得したいという思いを伝えるなど、訓練後の就職を見据えた説明ができると申し込みもスムーズです。

合否のポイントは訓練へのやる気と就職に向けた強い意志

実際の講座を見学することのできる施設もあります。訓練によっては申し込みが多く、受講者を選抜するための選考が行われることも。その際、講座を見学する積極性がやる気の表れとして評価されることもあります。講座の内容を確かめる意味でも見学は重要ですが、入校の合否に影響するということも心に留めておいてください。

希望する訓練コースによっては、面接試験・筆記試験・適性検査が行われる場合もあります。民間の教育訓練機関などに委託される訓練でも、選考試験は各都道府県によって行われます。選考試験合格のポイントは、どれだけ訓練を必要としているかということと、訓練終了後の就職への強い意志です。後悔のないように、事前の準備を怠らないようにしましょう。

雇用保険の受給資格のない人であっても、公共職業訓練のコースを受講することはできます。ただし公共職業訓練に応募する際、失業手当を受給している方がやや優先される傾向があると言われています。同じCADを学ぶ講座であれば、確実に受講できるコースを選択するのも良いでしょう。

資格と技能でつながるCADオペレーターへの道

転職では経験者や有資格者が有利になるのは当然のことです。もともとCADオペレーション業務で実務経験がある人であれば、職業訓練や資格取得はさらに条件の良い就職先の道へとつながります。全く未経験の業界を目指すにあたって、経験不足を補うための資格の取得や職業訓練の受講は価値あるものとなるでしょう。職業訓練を通してスキルアップを図り、CADオペレーターへの道を切り開きましょう。