CAD/CAM/CAEの違いとは? 概要からソフト紹介まで
現代の製造業には不可欠なシステム、CAD/CAM/CAE。機械設計士を目指すなら、いずれについても理解しておくことが重要です。ここでは、CAD/CAM/CAEの違いやソフトの使い方についてわかりやすく解説します。
CAD/CAM/CAEとは
CAD/CAM/CAEは、ものづくりの支援に用いられるコンピューターシステムです。それぞれが連携して、製品の製図や製造の過程をサポートしていきます。これらを用いることで、従来人の手で行われてきた設計や製造にかかる時間が大幅に短縮可能です。
CAD/CAM/CAEの違いは使われる場面
前述の通りCAD/CAM/CAEはいずれも製品の製造に用いられますが、製造のどの過程で用いられるかは大きく異なります。3つのシステムそれぞれの特徴や使われる場面は以下の通りです。
CADが用いられるのは“設計”
CAD(Computer Aided Design)は、コンピューターを用いた“設計”のために用いられます。2次元と3次元の2種類があり、平面の図面を線分や円弧で描いたり、立体モデルを直方体や球で表現したりすることが可能です。無料のソフトもあり、CADオペレーターは最も触れる機会が多いでしょう。
CADについてさらに詳しくは、「CADとは?その特徴や、種類、ソフトにはどんなものがある?」をご覧ください。
CAMが用いられるのは“製造
CAM(Computer Aided Manufacturing)はCADで設計した図面通りの製品の“製造”のために用いられます。CAMは、CADで描き起こした図面をもとに、NCプログラム(工作機械を制御するためのプログラム)をつくります。そのプログラムを読み込ませ、Gコードと呼ばれる詳細な命令を工作機械に出すことで、製品を製造することが可能になります。CAMは、工作機械の精度向上や稼働率の最大化などに役立ちます。
CAEが用いられるのは“シミュレーション”
CAE(Computer Aided Engineering)は設計データに対する耐圧・耐熱などの“シミュレーション”のために用いられます。シミュレーションの対象は変位場、応力場、温度場、電磁場などさまざま。それぞれを数理モデル化して分析することで、製品の試作コストの削減や不具合の原因究明を実現します。宇宙空間など特殊な状況下のシミュレーションができるのもCAEならではのメリットです。
もう1つ押さえておくべきCAT
CAD/CAM/CAEとセットで知っておきたい単語にCAT(Computer Aided Testing)があります。CATは、コンピューターを使用して行う試作品や製品の“検査”に用いられます。製造の過程で必ず必要なわけではないものの、CAD/CAM/CAEと並んで重宝されているシステムです。3Dスキャナを用いて測定した製品のデータを元に、形状全体や曲面など測定が難しい部分をシステムが自動で検査してくれます。CATを導入することで、検査の工程が飛躍的にスピードアップします。
CAD/CAM/CAEは普及し続けている
矢野経済研究所の調査によると、国内におけるCAD/CAM/CAEの市場規模は2016年度で前年度比4.4%増の3,449億円の見込み。調査の開始された2014年度からは約6.9%市場規模が広がっていることになります。特に好調なのが機械系CAD/CAM/CAEの市場規模で、毎年5%近い拡大ペースです。
また、コンピューターの進化とともにCAD/CAM/CAEソフトの値下がりや統合、クラウド化が進み、より多くの企業・人に普及し始めています。
このように、CAD/CAM/CAEは機械業界を中心に、急速に広がっているのです。
CAD/CAM/CAEを用いるには?
CAD/CAM/CAEは、それぞれの機能が搭載されたソフトを購入することで使用が可能になります。ここでは、CAM/CAEの機能が単体もしくはセットで搭載されたソフトを厳選し、その使い方や特徴をまとめてご説明します。なお、それぞれのソフトは本体価格のほかに保守料・講習料など別途料金がかかることがあります。
CADの機能が搭載されたソフトについて詳しく知りたい方は、以下の2記事をご参照ください。
「3DCADから無料ソフトまで! CADの種類とソフトの特徴まとめ」
「【決定版!】無料で使える高機能2次元・3次元CADソフトまとめ」
Fusion 360
価格:38,880円/年
体験版:有(一般:1カ月間無料で試用可能、学生・個人・スタートアップ:3年間無料で使用可能)
体験版ダウンロード先:http://bizroad-svc.com/package/free-download/
3次元CAD/CAM/CAEのすべてが統合されたAutdesk社のクラウドソフトです。通常3DCADソフトは数十~数百万円と非常に高額ですが、Fusion360は学生や新規事業主を対象としているため、年間38,880円という驚きの価格で利用することができます。ソリッド・サーフェス・ポリゴン・メッシュのモデリングが可能なうえ、負荷制御加工やクラウドでの計算などCAM/CAE機能も充実しています。
Cimatron
価格:455万円~
体験版:なし
CAD/CAMが統合された3D Systems社の高機能ソフトです。平面・曲面などどんな複雑な形状やサイズも問わず、モデリングが可能です。特に金型製作については全工程をサポートする専用モジュールを備えているため、記録的な短時間で非常に込み入った形も作成できます。CAMについても高品質な荒取り機能や仕上げ機能で高精度・高品質な加工を施すことが期待できます。
Mastercam
価格:140万円~
体験版:なし
CAD/CAMが統合されたCNC社のミドルレンジソフトです。CAD/CAMシステムで世界No.1のインストール台数実績を誇っています。CAD機能はソリッド・サーフェスのどちらにも対応可能。CAM機能はマシニングセンタ・旋盤など、さまざまな工作機械のNCデータを作成できます。モジュール同士を組み合わせることで、金型・試作・部品加工を問わずさまざまな作業に対応することができます。
SOLIDWORKS Flow Simulation
価格:240万円
体験版:なし
SOLIDWORKS社のCAEソフトです。液体やガスの流れが製品に与える影響を、設計段階中にコンピューター上でシミュレーションすることができます。変形の様子や流体の軌跡などをアニメーションとして視覚化することも可能です。開発元が同じ「SOLIDWORKS CAD」と統合すれば、開発にかかる時間やコストをさらに大幅に減らせるでしょう。
NCSIMUL
価格:136万円
体験版:有(作業内容が保存できない)
体験版ダウンロード先:http://www.saeilo.co.jp/products/ncsimul/download/
SPRING Technology社のCAEソフトです。「NCプログラムのエラーチェック」「加工上のアラームチェック」「加工物の形状チェック」と3段階のチェックを重ねることで、効率よく複合加工機や5軸加工機を検証します。エアカットの削減や切削送りの最適化を行うことで、加工時間の短縮や工具寿命の延長を実現することも可能です。
まとめ
CAD/CAM/CAEの違いは理解できたでしょうか? これらのソフトへの理解を深めるにつれて、機械製品の設計・製造のプロフェッショナルに近づくことができるでしょう。ぜひこの記事を皮切りにCADだけでなく、CAMやCAEの勉強も始めてみてください。