年表で見るCADの歴史 誕生から現在まで
CADを使って仕事をしている人やCADをこれから学ぼうと思っている人は、ふとCADの歴史について気になることがあるのではないでしょうか。CADはいつ生まれ、どのように発展してきたのか。
この記事では年表付きで2次元CAD・3次元CADの歴史についてわかりやすくご紹介します。
1.CADの歴史とは? 年表付きで解説
まずは、年表でCADの歴史をざっと確認してみましょう。1960年代以前もコンピューターによる設計の研究は行われていたものの、CAD自体はまだ誕生していませんでした。1950年代に電子回路の主力部品が真空管からトランジスタに変わってからはコンピューターの処理速度が加速し、研究もさらに進むことになりました。
1963年:Sketchpadが誕生
CADの歴史は1963年、2次元CADソフト「Sketchpad」が生まれたことで始まります。開発者はアメリカの計算機科学者アイヴァン・エドワード・サザランド。Sketchpadはプログラミングが必要なく、ペンを動かすだけで画面上に図面を描き簡単に操作できるという点で大きな衝撃を与えました。この際、オブジェクトといったCADの基本概念も形作られていたといいます。 それまでの製図はドラフターという製図に特化した机を用いて行われるのが一般的でしたが、Sketchpadの登場を皮切りに徐々にコンピューターによる製図が現実味を増していきました。アイヴァン・エドワード・サザランドとは
CADの元祖、Sketchpadの生みの親。1938年アメリカで誕生。最初のヘッドマウント3次元ディスプレイシステム「ダモクレスの剣」を開発し、バーチャルリアリティの世界に大きな功績を残したことでも知られている。その功績から、チューリング賞、京都賞など多数の権威ある賞の受賞歴がある。1971年:ADAMが誕生
1971年、現在のCADソフトの70%以上の源流だと言われる革新的ソフト、ADAMがアメリカの情報工学者パトリック・J・ハランティーによって生み出されました。ADAMとは、Automated Drafting and Machinery(自動による製図と機械)の略で、自動で製図し加工できるのが大きなポイントです。ハランティーは当初コンピューターによる自動設計システムをDAC(Design Automated by computer)と名付けていましたが、マサチューセッツ工科大学電子システム研究所のダグラス・T・ロスによりCAD(Computer Aided Design)と言う言葉が生み出され、それが定着することになりました。パトリック・J・ハランティーとは
現在のCADソフトの70%以上の源流である最初の商用CADソフト、ADAMの開発者。1961年より自動車メーカーGeneral Mortorsの研究所に入り、コンピューターによる自動設計システムの開発を推し進めた。General Mortorsを退職した後は自身の会社を立ち上げた。1977年:CATIAの誕生
1977年、最初の3次元CADシステムであるCATIAがフランスの航空機製造者マルセル・ダッソーによって生み出されました。このときのCATIAはダッソー社内だけの製品でかつ専用のハードウェアでしか動作しないものでした。CATIAの一般発売は現在までつづくフランス、ダッソー・システムズ社が創業された1981年にはじまりその後、何度も改良されたバージョンが発売されることになります。なお、3次元CADの研究自体は1970年代初頭から行われていました。マルセル・ダッソーとは
3DCADの源流、CATIAの生みの親でありCATIAを現在でも発売するフランス、ダッソー・グループの創始者。1892年、フランスで誕生。航空機会社を創業し、プロペラ機製造に従事。自社の製品設計用にCATIAを開発し、1981年に3DCADソフトウェアの販売専門のダッソー・システムズ社を立ち上げる。1986年死去。1980~90年代:一般企業でのCADの導入が開始
1980年以降、CADは一般企業での導入が進みます。1982年には、Autodesk社のAutoCAD、現在のNXに統合されるまえのSDRC社のI-DEASなど有名ソフトがリリースされました。 それまでのCADは巨大なコンピューターによって動作するもので、一部の大手企業以外が手軽に導入できるようなものではありませんでした。しかし、メモリ容量アップや小型化などコンピューター自体の普及が進んでいくことで、CADは普及していくことになりました。2000~10年代:CADの定着と更なる活用へ
2000年代にはCADは中堅・中小企業にも普及し、定着することに。それは2次元だけでなく、3次元のCADも含みます。1995年に現在も人気のミドルレンジCADソフトウェアSOLIDWORKSが発売されていたこともその一助となったかもしれません。CADは現在も進化を続けており、クラウド上でデータを共有できるようになる、タブレットでも利用できるようになるなど、利便性を伸ばし続けています。将来的にはAI(人工知能)と連携したCADが勝手に設計を行ってくれるようになるかもしれません。