CADとゲームの知識まとめ 業界で役立つ? PCの互換性は?
ゲームの背景や人物、装備などのグラフィックは日進月歩で進化しており、それらを制作する仕事に就きたいと考える方も少なくないでしょう。中にはそのような仕事を目指す場合にCADが役立つのではないかと考える方もいるかもしれません。この記事では、ゲームとCADの関係について詳しくご説明します。
1.CADはゲーム業界で役立つ?
まずは、CADはゲーム業界で役立つのか、その真相についてお伝えします。
ゲーム業界で役立つのはCADではなく3DCGソフト
結論からいうと、CADはゲーム業界ではほとんど用いられていません。ゲーム業界でグラフィックを制作するのに使われているのは3DCGソフトで、CADとは似て非なるものです。そのため、ゲーム業界で使えるスキルを磨きたい場合は3DCGを学んだ方が良いといえます。
それでは、CADと3DCGの違いはどこにあるのか詳しく見てみましょう。
CADは設計、CGは作図が目的
CADは設計用のソフトウェアですが、3DCGは作図用のソフトウェアです。すなわち、CADと3DCGでは製図の目的が異なります。具体的には、3DCADは建築物や車、部品などのモデルを作成する際に、3DCGはアニメやゲーム、キャラクターを作成する際に活用されます。
CADは再現性が、CGは処理速度が重要
3DCADはその名の通り図面を3次元(実体)で表現するものです。よって、専門知識がなくても見ただけで容易に形状を把握できるかどうか、実物に対する再現性が高いかどうかが重要視されます。そのため、体積・表面積・重心など多くの数値データがひもづけられています。
一方の3DCGも3次元での表現です。しかし、ゲームやアニメなどの場合、キャラクターやアイテム、背景などをつくるモデリング、キャラクターに動きをつけるモーション、臨場感を出すためのエフェクト、陰影をつけるライティングといった複雑で膨大なデータ量を使う作業が多いため、それらがスムーズに行えるような処理速度が求められます。そのため、目に見える部分以外の情報は基本的にひもづけられていないのです。
CADはソリッドモデル、CGはサーフェスモデル
3Dモデルにはソリッドとサーフェスという種類があり、多くの場合、3DCADはソリッドモデルに、3DCGはサーフェスモデルに該当します。
ソリッドモデルはモデルの表面だけでなく中身が詰まっているため、実際の素材のように切ったりつなげたりして使うこともできますし、立体どうしを組み合わせて新たな立体を作り上げることもできます。
一方サーフェスモデルは表面だけで中身は空洞です。そのため質量や重さなどの情報がなく実際の素材のようには使えません。ただし、見た目を形作るのは得意で、ソリッドモデルよりも容易に複雑な形を表現することもできます。
ソリッド、サーフェスの違いが3DCADと3DCGの役割の違いにもつながっているのです。
3DCADが向いているのはこんなこと
ゲームのグラフィックの制作に向いているのは3DCGであり、3DCADはゲーム業界ではあまり用いられるツールではないことがわかりました。では、3DCADはどのようなことに役立つのでしょうか?
家やビルのような建築物のモデリング
3DCADは家やビルのような建築物の設計に使えます。体積、表面積、質量などのデータが正確に出されるため、巨大な建造物でも構造力学に基づいて設計することができるからです。また、3DCADでは部品を組み立てた後に負荷をかけたらどうなるかといったチェックや解析も行えます。
乗り物や機械のモデリング
3DCADは自動車・航空機などの乗り物や家電などの機械の設計にも役立ちます。数値が正確に出せるため、無数の部品を組み立てる必要がある乗り物・機械類の設計にも非常に適しているのです。また、解析が行える3DCADなら「完成した部品を組み立てたところ隙間ができてしまい、部品を一から調整しなければならなくなった」などの問題が起こりません。
家具・インテリアのモデリング
設計に適した3DCADは、家具、インテリアのモデリングにもよく使われています。複雑な形状や曲面の設計も正確な数値を元に行えるため、さまざまな形状の家具や構造物を生み出すことができるのです。趣味のDIYに3DCADを用いる人もいます。
日用品・フィギュア・おもちゃのモデリング
造形物を生み出すことに適している3DCADは、3Dプリンターを用いて日用品やフィギュア、おもちゃをモデリングする際にも活用することができます。3Dプリンターで使える3DCADデータを共有できるサイトもあります。
CADと3Dプリンターによるものづくりについて詳しくは「CADと3Dプリンターでものづくり データ作成方法やソフトを紹介」
2.ゲーム用PCは3DCADにも使える?
ここでは、いざCADに取り組もうと思った場合、現在使っているゲーム用PCで3DCADを操作することは可能なのかについてご説明します。
可能だが、一部不具合が出る可能性も
基本的にゲーム用PCでも3DCADは使用可能です。ただし、使用中に一部に不具合が出る可能性があり、そうなった場合に解決するのが難しいとされています。これには、ゲーム用PCと3DCAD用PCではグラフィックボードが違うことが関わっています。
グラフィックボードとは、映像や画像をより鮮明に映し出すための部品です。ゲームでは3Dによる再現性よりも描画スピードが優先されるため、ゲーム用のグラフィックボードは速度優先で作られています。対して、CAD用のグラフィックボードは再現性に重点を置いています。
そのため、ゲーム用のグラフィックボードが搭載されているPCでCADを操作すると、一部の機能が使えなかったり、3DCGがきちんと描画されなかったりすることがあります。3DCAD用のグラフィックボードは不具合が起こっても設定変更などで解消できますが、ゲーム用の場合は設定変更がほとんどできないため、不具合に対応できないことが多いです。
ゲーム用コントローラーがCADに役立つ場合も
ゲームには欠かせないコントローラーや3Dマウス、マウスパッドは、CADを操作する上で役立つ可能性があります。ゲーム用マウスは、キャラクターを走らせたりジャンプさせたりといったさまざまな操作に対応しています。そしてCADを操作する場合にも、対象物を動かしながら回転させたり、拡大・縮小するといった自由度の高い動きが求められます。そのため、ゲーム用マウスはCADとの相性が良い傾向にあるのです。
マウス選びについて詳しくは「CADオペ必見!マウスの種類や選び方・おすすめポイント」
3.CADとCGは似ているようで異なる
CAD・CGともにクリエイティブなイメージがありますが、それぞれ得意とする分野や操作に適したPC設定が違います。しっかりと区別して、自分がどちらを学びたいのかを考えましょう。