土木業界で使われるCADとは? ソフトや勉強・練習方法も

人々の生活を支えている土木業界。その設計には広くCADが用いられています。

この記事では、土木業界におけるCADの役割と土木に特化したCADソフト、さらに土木CADの練習・勉強方法をご紹介します。

1.土木CADとは?

まずは、土木業界で用いられるCADの基本を押さえておきましょう。

土木CADは土木業界で使われるソフトウェア

土木CADとは、土木業界で使われる設計用のソフトウェアのことです。CADは、Computer Aided Designの略で、コンピューターを使って設計すること、設計するためのソフトウェアを指します。土木業界では、道路や橋、ダムなど人々の生活の基盤となるような建造物の設計にCADが用いられます。

CADについて詳しくは→CADとは?その特徴や、種類、ソフトにはどんなものがある? 

土木業界でCADを用いる仕事

土木業界でCADを用いる仕事には、具体的には以下のようなものがあります。

CADオペレーター

CADオペレーターとは、橋や歩道橋といった建造物の設計図をCADを使って描く仕事です。設計を行うのは設計士の仕事のため、CADオペレーターは手書きの図面を見やすく清書したり、図面の修正を行ったりするのが主な仕事になります。CADを使う以外に、資料づくりなど広い意味でのアシスタント業務も任される場合があります。

CADオペレーターについて詳しくは→CADオペレーターとは?仕事の内容や向いている人とは 

設計士

指示に従って図面を描くだけでなく、自ら設計を行う設計士もCADを使って製図を行います。設計士の場合は、CADの操作スキルだけでなく、図面の引き方や耐久性の保ち方など設計にまつわる知識を身に付ける必要があります。その代り、CADオペレーターよりも年収が高まることが期待されます。

設計士について詳しくは→CAD設計士とは?CADオペとの違いや、なり方とは? 

土木で扱われる図面とは?

土木の図面は、その目的によって以下のようなものに分けられます。

案内図
工事する箇所と既存の施設の関係を表す。
説明図
工事する場所全体の形状や座標、縦横断面など全体を表す。
構造図
構造物個々の形状や寸法、材質などを表す。
詳細図
構造物に使われる部材の形状や寸法、材質などを表す。

また、それぞれについてさらに細かく施工箇所や工事範囲のみを記した「位置図」、断面と柱の形を記した「一般図」などの細かい種類があります。土木業界でCADを使って仕事をする場合、このような図面にまつわる知識も頭に入れる必要があります。

2.土木で使われるCADソフトとは?

土木業界で使われるCADソフトにはどのようなものがあるのか、実際のソフト名などもまとめつつ手短にご紹介します。

基本的には建築と同じ

土木で使われるCADソフトでポピュラーなものは、「AutoCAD」「Jw_cad」など建築業界で用いられるCADと同様です。建築・土木はつくるものが家やビルといった建築物なのか、道路やダムといった構造物なのかという違いはありますが、使用するソフト自体は共通するものが多いです。種類の違いはあっても、図面を描くために必要な機能には大きな違いはないからです。土木CAD業界で使われることも多い建築CADソフトについて詳しくは「建築CADとは? 仕事内容、ソフト、なり方を紹介」をご覧ください。

土木に特化したCADソフト

土木のCADソフトは建築と共通しているとはいえ、やはり図面の書き方や最適な機能性には違いがあるため、土木に特化したCADソフトも使われています。ここでは、土木に特化したCADソフトを3種類ご紹介します。

DynaCAD土木Plus

手書き感覚で製図が行えるDynaCADの土木に特化したバージョンです。通常の製図に必要な機能に加え、ヘロン/三社面積計算・作図機能や効率よく使える測量機能、豊富な土木構造図のひな型などが用意されており、土木CADオペレーター・設計者にとって非常に役立ちます。

価格
オープン価格(定価は具体的に定められていない)
対応OS
Windows 10,8,7
WEBサイト
http://www.dynacad.jp/index.php

A納図(エーノート)

直感的な操作や幅広い入力形式への対応など、利便性の高さがポイントの土木CAD。XYH座標の入力や土量集計、土方カーブなど土木工事に特化した専用コマンドが45種類用意されており、機能性も申し分ないといえます。電話サポートや自動アップデートが受けられる保守会員サービスも有償で利用できます。

価格
要問合せ
対応OS
Windows 10,8.1,7
WEBサイト
https://www.kentem.jp/products/anote/

HO_CAD pao【フリー】

土木・測量に適した機能を持つフリーの2次元CADソフトです。無料でありながら測量座標値の描画・計算や6色のペンと8種類の線の選択など便利な機能がしっかり搭載されています。低容量で動作のストレスが少ないのもうれしいポイントです。

価格
無料
対応OS
Windows 10,8,7,Vista,XP,2000
WEBサイト
http://www.ho-cad.com/

3.土木CADの勉強・練習方法

土木業界でCADを使って働きたいと思ったら、どのようなスキルを身に付けるべきなのか、また、どのような勉強法を採用するべきなのかをまとめました。

土木CADオペレータ―に必要なスキル

CADオペレーターに必要なスキルは、主に以下の3つです。もちろん最初からすべてを完璧にする必要はありませんが、できる仕事を増やしていくにはいずれも必要になることでしょう。また、以下の3つ以外にもパソコンの基本操作やコミュニケーションスキルなど仕事の基礎スキルは不可欠です。

土木についての知識

土木業界で働く以上、土木についての知識は不可欠です。工法の種類、丁張りなどの専門用語、業界の慣習など、覚えるべき知識は無数にあります。CADオペレータ―として働きながら、日々学んだことを蓄積する形で勉強していくのが最も効率が良いでしょう。

製図についての知識

製図の基礎知識もCADオペレータ―にとってなくてはなりません。図面にはどのような種類があるのか、どのような手順で図面を描いていくのかなど製図の基礎知識をしっかり押さえましょう。実際に製図を行いながら覚えていくのがおすすめです。

CADを扱う技術

当然ながら、CADを扱う技術は重要です。コマンドやツールの使い方を覚え、複雑な図面も描けるようになったり、短時間で図形を仕上げられるようになればどんどん設計士に重用されるようになるでしょう。

ケース別の勉強法

土木CADを身に付けるための勉強法には、独学と専門学校・スクール・職業訓練などの人から教えてもらう方法の2種類があります。

独学

CADは、独学で習得することも可能です。ただし、CADを扱える程度のスペックを持ったパソコンとCADソフト。図面を確認するためのプリンター、勉強用のテキストやWebサイトは欠かせません。最初にそれなりの投資が必要なことは覚悟しておきましょう。

専門学校・スクール

「体系的にCADについて学びたい」「独学ではやる気が保てるか不安……」という方は、専門学校やスクールでCADの講座を受けることをおすすめします。CADの基本的な操作スキルから製図の基礎知識、資格勉強の対策方法まで身に付けるべき知識を一通り教えてもらえます。また、ハローワークの職業訓練でも土木CADについて学べるところはあるようです。

専門学校・スクールで学べることについて詳しくは→CADスクールや専門学校のCAD学科で学べることとは? 

土木CADの練習は土木図面で

土木CADを習得したい場合は、必ず土木図面で学べる講座や参考書を探してください。一般には建築CADや機械CADについての講座やテキストが多いですが、建築とは近しい部分があるもののやはりルールやポイントが異なるため非効率な勉強になりかねません。また、つくりたいものと異なるものの図面を使って勉強するのは、モチベーションにもつながりません。「土木CADが学びたい!」という意思を大切にして学ぶ手段を模索しましょう。

土木CADの資格とは?

土木CADの資格としては、土木CADインストラクターが挙げられます。土木CADインストラクターとは、日本インストラクター技術協会が主催する土木製図の基本からCADソフトの操作までが実務レベルに到達した人を認定する試験です。

【土木CADインストラクター認定試験の概要】

受験資格
特になし
受験料
1万円(税込)
申込期間
奇数月の1日~30日
受験の流れ
1.インターネットから受験申込を行う
2.受験票・試験問題・解答用紙・返信用封筒を受験料の代金引き換えで受け取る
3.送られてきた問題に解答する
4.答案を提出する
5.合否通知を受け取る
合格ライン
70%
公式サイト
https://www.jpinstructor.org/shikaku/dobokucad/

CADは生活の基盤の設計に欠かせない

土木CADの概要やソフト、勉強法についてご紹介しました。道路や橋など私たちの生活の基盤となる構造物の設計に、CADの技術は欠かせないものとなっています。ぜひこの記事を参考にCADを身に付け、仕事に生かすことを考えてみてください。