CADの業界とキャリアアップ
CADオペレーターとは、設計士などの指示に従いコンピュータ上で図面を作成する仕事です。設計・製図のアシスタントとして欠かせない存在であり、建築・土木業界や機械業界、さらにアパレルメーカーなど活躍のステージもさまざまです。
CADオペレーターのキャリアアップとは?
CADソフトを用いて図面を作成し、設計や製図のアシスタントとして活躍するCADオペレーター。ここでは、CADオペレーターのキャリアステップを紹介します。
CADオペレーターのキャリアをスタートするには?
CADオペレーターの仕事は、CADソフトを用いて図面を作成することです。活躍する業界は幅広く、建設会社や住宅、電子機器、工作機械・工作部品、音響機器、自動車など各種メーカーの設計部門、アパレルメーカーのデザイン部門などがあります。近年は3D技術の普及とともに3D CAD(3次元CAD)を扱う企業も増えているため、3D CADを扱えるオペレーターの需要が特に高まっています。
CADオペレーターのキャリアのスタートとしては、専門学校でCADの技術を学び、設計や製図を扱う企業に就職するという流れが一般的です。就職先は設計・製図を扱う企業がメインになるでしょう。
CADを扱う業界についてより詳しく知りたい方は「CADを扱う業界と利用されるCADとは?」をご覧ください。
CADの資格を取得すると就職でも有利に
CADオペレーターに必須の資格はありません。しかし、資格を取得しておくと就職・転職活動でアピールしやすくなります。
なお、CADに関する資格には厚生労働省の中央職業能力開発協会が認定する「CADトレース技能審査」のほか、民間の資格である「CAD利用技術者試験」や「建築CAD検定試験」などがあります。なお、CADトレース技能審査は日本で唯一の公的なCADにまつわる資格ですが、平成29年度をもって廃止されることが決定しています。
CADオペレーターの求人では「未経験可」という募集もよく見られます。しかし、CADオペレーターは個人のスキルが重視される職業です。即戦力を求める企業は、実務経験豊富な人材を優先して採用する傾向にあります。もし未経験や異業種からCADオペレーターへの転職を考えているなら、CADの資格を取るなどして仕事への意欲をアピールする必要があるでしょう。
CADオペレーターはどのようなキャリアを積んでいくか?
就職してからはオペレーターの業務をこなしながら、設計や製図の技術を学びキャリアを積んでいきます。正確な図面を引くだけでなく「設計をこなせるCADオペレーター」になると活躍の場が広がります。また、設計士や建築士へキャリアアップを図ることでスキル・収入アップも可能です。
派遣やパートとして働く人が多いCADオペレーターですが、正社員やフリーランスとして活躍する人ももちろん存在します。「子育てをしながらゆったり働きたい」「正社員でしっかり稼ぎたい」など、個人のライフスタイルに合わせて働き方を選べる点もCADオペレーターのメリットです。結婚や出産など、ライフイベントの多い女性でも働きやすい職業といえるでしょう。
業界・働き方別、CADオペレーターのキャリアアップ例
CADオペレーターの主な仕事は図面を描くことですが、さらに設計・製図の技術を身に付けることで仕事の幅が広がり、収入アップも見込めます。ここでは設計士や建築士、プロのCADオペレーターを目指すケースを例に、CADオペレーターのキャリアアップ方法を紹介します。
機械メーカーのCAD設計士
機械業界で働くCADオペレーターであれば、CAD設計士を目指すことが可能です。CAD設計士とはその名の通り、CADソフトを用いて設計を行う仕事です。CADオペレーターと異なり、指示通りに図面を引くだけでなく、自ら設計を行う能力が求められます。
CAD設計士へのキャリアアップ例
CAD設計士を目指す場合は、CADオペレーターとして働きつつ機械設計の技術を学んでいきます。具体的には機械工学や機械材料など、機械に関する基本的な知識や製図の技術を身に付けます。3D CADを採用する企業が増える一方で3D CADを扱える人材はまだ少ないため、これを扱えると就職・転職時に大きなアピールポイントになります。
CAD設計士になるためには
機械設計に必須の資格はありませんが、下記の資格を持っているとスキルアップや転職で役立ちます。
- 技術士(機械部門)
- 機械設計技術者(1~3級) ※ 2級以上は実務経験が必要。
どちらも機械工学と製図手法を学べる資格なので、機械メーカーのCAD設計士としてキャリアアップしたい方にはおすすめです。
ただし、国家資格である技術士試験は難易度が高く、ここ最近の合格率は14~16%前後。民間資格の機械技術者試験では合格率が40~50%程度となっています。セミナーや通信教育などによる試験対策が一般的です。
大手ゼネコンの建築士
建築業界に勤めている場合は、CADオペレーターを経て建築士になることも可能です。建築士の資格を取得すると建物の設計、工事管理等を業務とする建築士事務所を開設できるようになります。一級建築士試験はかなりの難関とされていますが、転職でも有利になり生涯使える資格です。
建築士へのキャリアアップ例
建築士には一級建築士、二級建築士、木造建築士などの資格があります。二級建築士と木造建築士は各都道府県知事の免許が、一級建築士は国土交通大臣の免許が必要となります。
また、建築士としてさらなるキャリアアップも可能です。例えば、一級建築士の免許を取得した後に5年以上の実務経験を積み特定の講習を修了することで、設備設計一級建築士や構造設計一級建築士の資格を取得できます。どちらも高度な専門能力や技術を要する資格であり、設備設計・構造設計のスペシャリストを目指せます。
CADオペレーターから建築士へキャリアアップする場合は、まず二級建築士や木造建築士の資格を取得し、実務経験を積んで一級建築士を目指します。
建築士になるためには
二級建築士の受験資格は下記の通りです。
基本的に大学や専門学校などを卒業し指定科目を修めていることが条件です。しかし、建築に関する実務の経験が7年以上あれば建築関係の学校を卒業していなくても受験は可能です。
ここで注意すべきは、CADオペレーターの経験は実務経験に数えられないことです。
建築士法では「単なる建築労務者としての実務(土工、設計事務所で写図のみに従事していた場合等)」を建築実務の経験として認めないと定めています。
つまり、建築士へのキャリアアップを目指す場合は、CADオペレーターの業務以外に建築物の設計や工事管理、指導監督などを経験しておかなければなりません。
なお、二級建築士として4年以上の実務経験を積めば一級建築士の受験資格を得られます。
プロのCADオペレーターとして独立・開業
CADオペレーターはパソコンとCADソフト、プリンターがあればどこでも行える仕事です。いずれは独立し個人事務所を構えたいと考えるCADオペレーターも少なくありません。
しかし、単に図面を引くだけのオペレーターとして独立することは不可能に近いといえます。独立する場合は建築や設計の知識を身に付けたうえで、設計とCAD製図を一挙に引き受けるなど、CADオペレーターとして業務の幅を広げる必要があるでしょう。
プロのCADオペレーターへのキャリアアップ例
CADオペレーターとして独立するためには、第一にCADの技術を磨く必要があります。素早く正確な図面を引けるCADオペレーターを目指しましょう。最初から独学で学ぶことは難しいため、まずは企業に就職し、さまざまな案件を通してCADオペレーターとしてのスキルを伸ばすのがおすすめです。
加えて、業界の知識を吸収し、人脈を広げておくことも重要です。在職中に培った人間関係から、いずれクライアントが生まれるかもしれません。
プロのCADオペレーターになるためには
CADオペレーターとして独立してからも仕事を獲得するためには、CADの技術のほかにコミュニケーション能力などが必須となります。
まずは「この人にお願いしたい」とクライアントに思ってもらえるよう、正確性やスピードを意識した仕事を心掛けましょう。図面の品質を高め、納期を守ることも重要です。CADに関する資格を持っていれば、営業時のアピール材料になります。
また、独立した場合はクライアントとの折衝も対応するためのコミュニケーション能力が必要です。クライアントとの信頼関係によっては、継続的に依頼を受けることができます。
CADオペレーターがキャリアアップするコツとは?
CADオペレーターがキャリアアップするためには、設計・製図の知識を身に付けスキルを磨く必要があります。独学も可能ですが、公共や民間の講習会やセミナーを活用すると効率的に勉強できます。
自治体のキャリアアップ講習に参加する
自治体によっては、業務で役立つ技能や知識の習得を目的としたキャリアアップ講習を開催しています。「キャリアアップ講習」や「スキルアップセミナー」など都道府県により名称は異なりますが、どれも事務や経理、プログラミングなど幅広いテーマを取り扱っていて、個人でも応募が可能です。
平日夜間や土日を中心に開催されることが多く、働きながら講習を受けることができます。
CADについては基礎や応用、さらに建築分野や機械分野に特化した講座が揃っています。
キャリアアップ助成金制度を利用する
厚生労働省では、労働者のキャリアアップを支援する目的で「キャリアアップ助成金制度」を設けています。これは、企業がいわゆる非正規雇用の労働者(契約社員、派遣社員、パートタイマーなど)に対してキャリアアップを促進し、正社員化や人材育成、処遇改善などの取り組みを行った場合に一定の助成金が支給される制度です。
企業によってはこの助成金を利用した研修やセミナーを実施しているところもあるので、機会があれば参加してみましょう。
CADオペレーターは多様なキャリアアップが可能
CADオペレーターは正社員や派遣社員など多用な働き方が可能で、未経験でも挑戦できる職業です。最初こそ地道な作業が多い仕事ですが、設計士や建築士、独立開業を目指すことも夢ではありません。スキルを磨いてキャリアアップを目指しましょう。