CADと3Dプリンターでものづくり データ作成方法やソフトを紹介
フリーソフトも増えてきた3DCAD。3Dプリンターと併用することで、仕事や趣味のものづくりが簡単にできることをご存知でしょうか。 この記事では、3Dプリンターを使ったものづくりについて、必要なものから実際のデータ作成方法までご紹介します。
1.3Dプリンターの基礎知識
まずは、そもそも3Dプリンターとは何か、という基礎知識と、3Dプリンターのものづくりに必要なアイテム5つをチェックしてみましょう
そもそも3Dプリンターとは?
3Dプリンターとはその名の通り、立体の造形物をつくり出せるプリンターのこと。樹脂や金属といった素材を積み重ねることで、3DCADなどでつくられた設計データを形にします。本体自体の低価格化や知識の広がりにより、近年は企業だけでなく、趣味やライフハックに用いる個人の間でも広がっています。
3Dプリンターはいくらで手に入る?
家庭用の3Dプリンターであれば、2~3万円から手に入れることが可能です。購入は家電量販店でも可能ですし、Amazonや楽天などの通販サイトでも取り扱われています。
高い精度の立体物や金属性の立体物を出力したい場合、3Dプリンターの値段は跳ね上がり、業務用では100万円を超えるものも一般的です。しかし、ちょっとした便利製品や小物をつくって家庭で楽しむだけなら、10万円以下の製品でも申し分ないでしょう。
3Dプリンターのものづくりに必要な5つのアイテム
3Dプリンターを手に入れたら、ものづくりのために必要になるアイテムとしては、おおむね以下の5つが挙げられます。
【1】一定以上のスペックを持ったPC
ある程度以上のスペックを持ったPCは、3Dプリンターの造形には不可欠です。3Dプリンターのものづくりには、CADやスライサーなど容量の大きいPCソフトを用います。それらを快適に動作させるためにはそれ相応のCPUの性能や、メモリ、ストレージの容量が必要になります。3Dプリンターを始めるにあたってPCを購入する場合は、量販店のスタッフや詳しい友人に相談すると良いでしょう。
【2】3DCAD・3DCGソフト
3Dプリンターに読み込ませるデータをつくるためには、3DCADや3DCGなどのモデリングソフトが必要になります。3DCADは寸法の入った図面を3次元で表現するソフト。それに対して3DCGは立体的なデザインをつくるソフトであるという違いがあります。いずれも3Dプリンターのものづくりに有用ですが、正確な寸法を計って精緻なモデリングが行いたい場合には、設計ソフトである3DCADが適しているでしょう。
【3】STL検証ツール
STL検証ツールとは、STLデータの整合性をチェックするためのツールです。STLとは3Dプリンターで主に用いられるファイルフォーマットで、ほとんどのモデリングソフトで出力できます。できない場合は、Spin 3DなどのフリーソフトでSTL形式に変換しましょう。
STLデータは汎用性が高い代わりに、細かいエラーや物理的な問題が発生している可能性もあります。そのため、事前にソフトを使って検証するのがおすすめです。STL検証ツールには有償のもののほかに、Materialise MiniMagicsなどフリーのソフトもあります。
【4】スライサー
スライサーとは、STLデータを3Dプリンターで出力するように変換するためのソフトです。Gコードなどの輪切りのデータに変換することで、素材を何層にも重ねる3Dプリンターで実際に使えるようになります。スライサーは、3Dプリンターに付属している場合もあれば、有料ソフトや無料ソフトが販売されている場合もあります。
【5】フロントエンドソフト
3Dプリンターを制御するためのソフトがフロントエンドソフト(制御ソフト)です。フロントエンドソフトはGコードをもとに実際に3Dプリンターを操作するために用いられます。また、3Dプリンターへのデータの送信にもフロントエンドソフトは用いられます。こちらも多くは3Dプリンターに付属していますが、市販もしくはフリーのソフトを使う前提のものもあります。
こちらで紹介したようなソフトには、有料のものだけでなく、無料のものも多く存在します。それらのフリーソフトを使ってみたいという方は 【すべて無料】3Dプリンター用のおすすめフリーソフト15選をご参照ください。
2.3Dプリンターの使い方 造形物完成までの5ステップ
3Dプリンターのものづくりに必要なものはわかりましたか? ここからは、3Dプリンターを使って造形物をつくる際に通るべき5ステップを紹介します。
ステップ1:データを作成する
まずは3Dプリンターに読み込ませるデータを作成します。データの作成方法には3DCADなどのモデリングソフトを使う方法、実物をスキャンする方法、配布されているデータをダウンロードする方法の3つがあります。それぞれの詳細については3章でご紹介します。
ステップ2:データをSTL形式に変換する
3Dデータができ上がったら、データをSTL形式に変換します。多くの場合3DCAD・3DCGソフトでつくったデータをそのまま変換可能です。変換できたら、STL検証ツールでデータの整合性をチェックします。表面のポリゴンが裏返っている面はないか、表面だけで厚みのない部分はないか、見えない部分に穴が開いていないかなどをツールを使って確かめましょう。
ステップ3:3Dプリンターで造形する
STLデータの検証がすんだら、いよいよ3Dプリンターによる造形です。STLデータをスライサーでGコードなど機械を制御するためのデータに変換して、3Dプリンターに読み込ませます。3DプリンターにはPCと接続してフロントエンドソフトで操作する必要があるものと、データを読み込ませれば単体で動かせるものの2種類があります。
ステップ4:サポート材を取り除く
3Dプリンターのパーツはモデル材とサポート材に分けられます。そのうちサポート材は、出力が完了したら取り除くことになります。サポート材とは、本体パーツであるモデル材が固まるまでの間、形を保っていられるように支えるためのパーツのこと。そのため、造形が完了したらサポート材は不要になります。取り除く際は手やピンセットなどを使うのが一般的ですが、水に溶かせるサポート材が使える3Dプリンターもあります。
ステップ5:研磨など仕上げの処理を行う
サポート材が除去できたら、最後に研磨や色付けなどの仕上げを行いましょう。3Dプリンターは素材を層上に積み重ねて立体にするという仕組み上、安価なものほど積層痕と呼ばれる溝ができてしまいがちです。それらはブラシややすりでこする、溶剤で溶かすなどして取り除くのがベターです。
また、家庭用で手に入るレベルの3Dプリンターではフルカラーのプリントはできません。そのため、プリントした後に手作業で着色するのが一般的です。
【フィギュア・小物】3Dプリンターでどんなものがつくれる?
3Dプリンターは、立体の造形物であれば基本的にはなんでもつくれます。ただし、さまざまな素材を使ったり精巧な部品をつくったりするためには1,000万円を超えるような高価な機器が必要になります。数万円の3Dプリンターでつくられるものでポピュラーなものは以下の通りです。
- おもちゃ(フィギュア、キーホルダー、コマ……)
- 生活小物(ペン立て、表札、フック、固定器具……)
- アクセサリー(指輪、ペンダント、ブローチ……)
3.3Dプリンターでデータを作成する3つの方法
前章のステップ1に当たるデータづくり。その際に選択できる手段は3つあります。それぞれの概要やメリット・デメリットをご紹介します。
【1】モデリングソフトでデータをつくる
3DCADや3DCGなどのモデリングソフトでデータをつくる方法です。ソフトを操作する技術を身に付ける必要がある代わりに、自由に自分の思った造形物をつくることができます。操作方法は、ネット上の解説サイトや動画、書籍で学べます。もちろんより高度な作業は、専門学校や有料の講座で学ぶのが適しているでしょう。
CADスクールや専門学校に興味があるかたは「CADスクールや専門学校のCAD学科で学べることとは?」をご覧ください。
【2】実物をスキャンしてデータをつくる
3Dスキャナで実物の情報を読み込み、3Dデータに変換する方法です。一から物体をモデリングする必要がないため、大雑把に特定の形の造形物を量産したい場合に適しています。しかし、スキャナの性能がよっぽど高くない限り、完璧に同じ形にはコピーできないため、ほとんどの場合、スキャンしたデータをモデリングソフトで微調整する必要があります。また、すでに世の中にある形しかつくれないため、オリジナルの造形物をつくりたい場合には不向きです。
【3】配布されているデータをダウンロードする
すでに配布されているデータをダウンロードして使う方法です。こちらもオリジナルのデータをつくりたい場合には使えませんが、ほとんど手間をかけずに造形物をつくれるため、自分の理想通りのデータが見つかれば大きく手間を省けます。
以下のようなサイトでは、無料の3Dデータがダウンロードできます。
- サイト名
※クリックでアクセス - 特徴
・3Dプリンターメーカーが運営しており、データの多さやデザイン性が高い
・シンプルで作成しやすいデータが多い
・すべての3Dデータが無料もしくは99セントで販売されている
4.3Dプリンターは意外とお手軽?
3Dプリンターに必要なものと制作の手順を手短にご紹介しました。3Dプリンターでものづくりを始めるためには準備が必要ですが、フリーソフトや情報サイトもたくさんあるため、意外とスムーズに始められたという声も多いです。すでに3DCADソフトのスキルがある方もそうでない方も、これを機に3Dプリンターでものづくりを始めてみてはいかがでしょうか。