CADの図面管理の基本 役立つソフト紹介も
多くの図面を取り扱うCADオペレータ―やCAD設計者。建築や機械設計では膨大な図面が必要になるうえ、何度も改稿されるのが普通であるため、その管理に頭を悩ませる方も少なくありません。そこでこの記事では、図面管理の基本と管理に役立つソフト紹介を行います。
1.図面管理方法の基本
まずは、図面管理に取り入れると仕事がはかどる5ポイントを確認してみましょう。
【1】ファイルに命名規則を設ける
CADデータの制作に着手する前には必ず命名規則を設けましょう。規則に則って命名を行うことでファイルを混同するリスクを減らせますし、検索性も格段に高まります。個人ではなく、チームで作業することが多い製図の作業において、このような命名規則のメリットは欠かせないものです。
さて、実際の命名規則ですが、以下のような方式が一例として挙げられるでしょう。
例)
建築図_配置図_11111111_C_181211.拡張子
検索性やぱっと見たときの判別しやすさを鑑みると、以下の2ポイントは命名規則に加えることをおすすめします。
- 情報の意味ごとにアンダーバー(_)で区切る
- 大枠の情報→個別の情報の順に書く
【2】図面の変更履歴は必ず残す
多くの場合、図面はクライアントの要望や後からわかる問題、予算的な都合、方針転換などによって書き換えることになります。その際重要なのが、「いつ更新したのか」「この図面が最新なのか」が確認できることです。
もしその点が曖昧であれば、間違った図面を元に製品をつくってしまうことになるかもしれません。命名規則にリビジョン、更新日を含めるなど工夫を施すとともに、古い図面は別フォルダにまとめるなど混同しない工夫を施すことが求められます。
【3】データ格納ルールを整備する
データ格納のルールは命名規則と同時に決めておくべきです。図面管理でありがちな失敗に、属性の違う図面を同じフォルダに入れて違いがわからなくなってしまうことがあります。そのため、最初にデータ格納で必要な属性を洗い出し、図面格納の仕組みをつくってしまうのが良いでしょう。もしどの属性にも当てはまらない図面が出てきたら、その際は管理者に問い合わせるというルールもつくることが大切です。そうしないと、一時的なフォルダを社員が乱立させてしまい、格納規則が実質的に無視されてしまう、という事態が起こりかねません。
【4】図面共有の手間を簡略化する
ほかのCADオペレータ―や設計士に図面を共有する際の手間をなるべく減らす普及も現代の図面管理では欠かせません。図面データは膨大なデータ量になりがちなため、最適な共有方法をルール化しておくことで作業のスムーズさが変わります。
また、その際気を付けたいのがセキュリティ管理方法も共有し徹底させること。ファイルの転送にはインターネット上の大量ファイル輸送サービスを利用する、クラウドサービスを利用して共有フォルダに格納する、などのさまざまな手法がありますが、どんな手段でもインターネットを経由する以上何らかのリスクはあります。必ず英数字8文字以内を組み合わせたパスワードを設定する、アクセス権限の設定ルールを守るなどのルールを徹底させて大切な情報を含む図面の流出を防ぎましょう。
【5】図面管理システムを導入する
ここまでで説明したような図面管理の基本はパソコンに標準的な機能があれば特別なソフトを導入しなくても可能なことです。しかし、すべてを守ろうとするとなかなか手間になることは否めません。
そのため、図面管理システムを導入して管理の手間を軽減するのも一つの手です。図面管理システムにはCADソフトと連動しているものもあり、データを自動でフォルダ分けしたり保存・更新させたりと便利に利用することができます。
2.図面管理に役立つソフト・システム【フリーも】
こここからは、図面管理に役立つソフト・システム例をご紹介します。
フリーの図面管理システム「All F1」
個人が開発したファイル管理ソフト。CADデータ、MS OfficeデータなどWindowsのデータは一通り取り扱うことができ、画像のスライドショーやサムネイル8列表示が行えます。 使用するためには、マイクロソフトが提供するデータベースソフトAccessをパソコンに導入している必要があります。
- 対応OS
- Windows10,8,7
- 価格
- 無料(※ソース公開版:6万円)
- サイトURL(ダウンロード先)
- https://www.vector.co.jp/soft/winnt/util/se492834.html
パナソニックのデータ管理システム「CrossLead」
パナソニックが提供するデータ管理システムです。登録・検索・システム管理の3機能を搭載しており、わかりやすいUIも魅力。CADファイルのサムネイルとプレビューを自動で生成してくれるため、ソフトを開かなくても図面を確認することができます。
- 対応OS
- Windows10,7、MacOSX10.12(.6)、iOS10
- 価格
- スタンダードライセンス:100万円~
エンタープライズライセンス:500万円~
製造業の現場で生まれた「デジタルドルフィンズ」
Windows、MacOSのPCだけでなく、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン・タブレット端末にも対応したデータ管理システム。ものづくりの現場で大量の図面を持ち歩くのは不可能ですが、デジタルドルフィンズを導入すれば容易に手持ちの端末で図面が確認できます。
- 対応OS・端末
- Windows10,8,8.1,7、MacOS10.14以降、iPad、iPhone、Androidスマートフォン・タブレット
- 価格
- 公式サイトより資料ダウンロードで確認可能
- サイトURL(公式)
- http://www.digitaldolphins.jp
【コラム】Excelで図面管理は可能?
図面管理をExcelの表機能で行うことはできないかと疑問に思っている方も多いでしょう。結論から言うと、Excelでも図面管理を行うことは可能です。図面の種類、クライアントなどの項目を軸にデータを並べ、データの格納先へリンクさせればある程度わかりやすいデータベースにはなるでしょう。
ただ、図面管理という面では同じOfficeソフトでもAccessが適していますし、図面管理に特化したシステムではない以上、図面や対応案件が増えるほどにどうしても使いにくくはなってしまいます。そのようなデメリットを鑑みて専用のシステムとどちらが良いか判断すると良いでしょう。
3.そもそも図面管理はなぜ見直すべき?
そもそも図面管理方法はなぜ見直した方が良いのか、大前提となる部分を今一度確認しておきましょう。
図面管理に手間・時間がかかる
建築や機械など、CADを使う製造の場面では、数十、数百枚の図面が必要になるのがデフォルトです。そのため、周到にシステムを構築しなければ管理の手間だけで仕事時間が大幅に削られてしまうことになりかねません。設計士・CADオペレータ―はただでさえ貴重な技術者です。そのため、管理にかかる手間はできる限り減らして労働生産性を高めることに力を入れるべきなのです。
図面の種類について詳しくは→図面の種類と見方とは? 【建築・機械の一覧表付】
ミスのリスクが高まる
処理すべき図面が増えるとともに、取り違えのリスクは高まります。基本的に図面は何度も更新するため、最新のものを取り違えてしまうというミスも起こり得ます。しかし、1つのミスですべての作業が止まってしまうのがものづくり。ルールを設ける、システムで物理的に管理するなどミスを減らす工夫が不可欠です。
協力した作業がしにくい
図面管理が不十分であれば、他者と協力しての作業が非常にしにくくなります。どの画像のことを指しているのかが一目で伝わらないため、いちいち確認の手間が必要になりますし、そのようなことが続けば依頼することが億劫になってしまうでしょう。昨今増えてきたリモート環境での共同作業も管理体制が整っていなければ実現することは難しいです。
4.図面管理も1つのスキル
図面管理の心がけと図面管理システム、図面管理の意義についてご紹介しました。できるCADオペレータ―や設計士を目指すなら、CAD操作の技術だけでなく図面管理のスキルも理解しておきたいですね。この記事を参考に自社にあった図面管理方法を考えてみてください。