図面の種類と見方とは? 【建築・機械の一覧表付】

建築業界と機械業界はCADオペレーターが活躍する業界です。しかしCADオペレーターが活躍することは共通していても、それぞれの業界で制作する図面の種類と内容は大きく違ってきます。ここでは建築業界、機械業界の図面の種類とその内容について解説します。

1.図面の種類の基本と図面制作の3ポイント

まずは図面制作の最も基本的な心得から解説します。

建築、機械、インテリアなどさまざまな業界で活躍するCADオペレータ―。それぞれの業界で扱う図面も異なります。しかしどの業界でどんな図面を制作するにあたっても基本的なポイントは同じです。そこで最も基本的な3つのポイントについてご紹介します。

業界によって用いられる図面は異なる

同じ図面でも建築・機械など業界が違えば用いられる図面は異なります。

例えば建築業界では設計士は施主の意向に沿って設計するとともに、施主をはじめ工事関係者、役所など図面を確認する多くの関係者にとってわかりやすい図面を制作する必要があります。また建築基準法などの法律に準拠した寸法の書き込みなども求められます。

一方、機械業界では「部品が動く」ということを前提に部品同士の関係や配線の都合なども考えて図面を作成します。商品開発に伴い計画図、試作図の段階から緻密に積み上げるようにして、数多くの図面が書かれることになります。もちろん発注先、開発現場にわかりやすい図面であることも重要な要素です。

このように、業界が違えば関係する人もつくるものも違ってくるので、必然的に制作する図面の内容も異なります。

図面制作の3ポイント

業界によって制作する図面の種類と内容が違っても、図面制作のポイントは同じです。どの業界でも共通する図面を制作する際に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

【1】わかりやすさが最重要

クライアントや工事関係者など関係する人に図面の意図することが正しく伝わらなくては意味がありません。図面はたくさんの人が見るので相手に伝わりやすい図面を制作することが最も重要です。例えば、以下のようなルールは意識した方が良いでしょう。

  • 余計な装飾はせずシンプルである
  • 線の強弱などメリハリがある
  • 引き出し線や寸法の表記に一定のルールがある

【2】「誰に」「何を」伝えるのか考える

図面を作成する際は誰に何を伝えるのかを念頭において制作するようにしましょう。建築の場合だと施主や工事関係者、役所など、機械関係では外注企業、営業関係者、製造関係者など。それぞれの関係者にどのようなコンセプトで、どのようにつくるのかをわかりやすく伝えることが重要なのです。またそれぞれの人が求める情報を確実に図面の中に落とし込むことも大切です。

【3】伝えてはならない事項を押さえることも大切

誰にでもわかりやすく制作する必要があるからといって、どんな情報も図面に盛り込んでいいわけではありません。例えば機械関係だとクライアントが求めていない情報や社内機密とされている重要な情報を図面に盛り込むことはNGとされるでしょう。建築の場合で役所で認可を受ける際は認可を受けるために必要な情報だけを図面の中に盛り込めばいいのです。 ”伝えすぎで、逆に伝わらない”という事態が起こりえることを理解しておきましょう。

2.建築の図面の種類【一覧表付き】

ここからは、建築の図面の種類を一覧表付きで解説します。 建築現場で制作される図面は「意匠・構造・設備による分類」と「建設段階による分類」にわけられます。

意匠・構造・設備による分類

建築現場では設計の際に建物の意匠(デザインなど)、構造、設備の3つの観点から図面が作成されます。

意匠図

意匠図とは建物の間取りやデザイン、仕様など建物の完成後の姿を表現する図面です。上から見た平面図、配置図や横から見た立面図、断面図など建物をさまざまな角度から見る図面が作成されます。

■意匠図の種類
案内図、全体配置図
建物の住所や位置を示す図面(地図)です。周りの道路などとの位置関係や地盤状態を明記します。
配置図
建物の敷地の状態や敷地のどこに建物が配置されているか表す図面です。
平面図
建物の各階を真上から見た間取り図です。
断面図
建物を断面から切断し内側を真横から見る図面です。最低でも長辺、短辺の2方向のものを制作します。
立面図
建物の外観を東西南北から見た図面です。
屋根伏図
屋根を上から平面的に見た図面です。
展開図
各部屋の中央部分から四方の壁を見る図面で、各部屋の天井の高さ、窓の位置、ドアの位置、家具の位置などを確認することができます。
天井伏図
天井を下から見上げた図面で天井の位置、天井にはどの材料が使われているかなどを表す図面です。
求積図
敷地求積図、建築面積求積図、床面積求積図があり、敷地や建物の面積を求める際に使われる図面です。
矩計図(かなばかりず)
建物の地盤の位置や床・軒・窓の高さなど高さ関係全般を示す断面詳細図です。「くけいず」と読まれることもあります。
階段詳細図
階段の納まりを詳細に表す図面です。
平面詳細図
平面図をより詳細にし各部屋の仕様や窓、入口の寸法などを表す図面です。
建具表
建具とはドアや窓のことをいい、建物のすべての建具の種類、形状、サイズ、ガラスが入る場合はその種別を表す図面です。
雑詳細図
外壁や家具など建物のディティール部分の構造を表す図面です。建築設計の最終フェーズで書かれる傾向にあります。

構造図

柱や梁、壁など建物を支えている構造部材の配置や大きさ、接合部の形状など、実際に建物を建てるためのさまざまな情報が示されている図面です。

■構造図の種類
詳細図
構造部材の詳細な部分の納まり寸法や材料などを表す図面です。
伏せ図
柱や梁、建物の基礎などの構造部材を上から平面で表した図面です。構造部材のおおよその大きさがわかります。
軸組図
柱や梁、建物の基礎などの構造部材を横から立体的に表す図面です。
標準図
部材同士の納まりにおいて標準的なものを記した図面です。

設備図

設備図とは給水、排水、給湯、ガス、電気、空調など設備関係の仕様について示された図面です。配線や配管の経路、位置、コンセント数などが明確にされています。

建設段階による分類

建築図面の設計においてはその建築段階に応じて5つの図を制作することになります。その5つの概要は以下の通りです。

【1】基本設計図

基本設計図は設計の最も初期段階で作成される設計図。施工主の要望を受けて決められたデザイン、コンセプトなどに基づいて、建物の間取り、構造、材料、設備や外観や内装といった必要要素を網羅する形でつくられます。また、環境や周辺の法規制などの条件も考慮されます。

【2】実施設計図

実施設計図は基本設計図に基づいてより詳細に制作される設計図です。見積作成は実施設計図をもとに行われ、実際の施工も実施設計図がベースとなります。

【3】確認申請図

住宅を建てる前に役所や検査機関に確認申請をする図面で、増改築などで申請の際にも必要になる図面です。

【4】施工図

実施設計図をもとに製作されるより詳細な設計図面です。現場の施工工事は施工図によって行われます。

【5】竣工図

実際に竣工した建物を正確に表した図面です。建物は建築工事中に設計変更や配管、配線の変更をすることもあるので、施工図と違ったものになるケースも多いです。

3.機械の図面の種類【一覧表付】

機械製造で作成される図面の種類について解説します。

製品を製造するまでに部品製造、組み合わせなどさまざまなプロセスを踏む必要がある機械製造はとても細かな作業が多いです。こうした特徴は図面にも反映されており、実に多くの図面が作成されることになります。

JIS規格による図面の種類

機械製造での図面の種類は用途、表現形式、内容の3つに分類され、JIS規格によって規定されています。それぞれの詳細と例は以下の通りです。

用途による分類

計画、試作など、機械設計において図面を用いる目的をもとにした分類です。

計画図
設計の初期に設計の意図や計画を表す図面。完成図のコンセプトや概要を伝えるためのものであるため、詳細な情報は入っていない場合が多いです。
試作図
機械製品や部品の試作を目的として制作する図面です。
製作図
実際に製品を製造するための図面で、組み立て図と詳細図からなります。
工程図
特定の制作工程で加工する部分や方法、工具などを示した図面です。
スエツケ図
機械やボイラーなどを据えつけるときの状態を示した図面です。
注文図
大きさや形状などを注文内容に沿って製作することを示す図面で注文書と一緒に提出します。
見積図
依頼者に見積もり内容を明確にするための図面。見積書と一緒に提出します。
説明図
製品の構造から性能までを説明する図面です。

表現形式による分類

全体像や装備状況など対象に合わせた表現方法に基づいた分類です。

展開図
図面に起こす対象を構成するすべての面を平面で表現する図面です。
曲面線図
製造物の複雑な曲面を表現する図面です。
計装図
測定装置、制御装置などを工業装置、機械装置などに装備・接続した状態を表す図面です。
(電気)接続図
電気記号などを使った電気回路の接続状況や機能を表す図面です。
配線図
製品や製品の部品の配線状況を表す図面です。
配管図
構造物や装置の配管の接続状況や配置状況を表す図面です。

内容による分類

部品や素材など製造物の段階によって異なる図面の内容をもとにした分類です。

部品図
部品を制作するための図面で寸法や素材など必要な情報が記されている図面です。
組立図
各部品の相対的な位置を記し、機械製品や部品を組み立てるために使われる図面です。
素材図
機械部品などの加工前の状態(=素材)を表す図面です。
鋳造模型図
鉄や銅、アルミなど金属材料で鋳造する製品の模型を描いた図面です。
配置図
建造物や製品を敷地内に設置する位置などを示す図面です。

4.業界が違っても図面制作のポイントは同じ

建築業界や機械業界など業界が違えば制作する図面の種類と内容は変わってきます。CADオペレーターを目指すなら各業界でどのような図面を制作するのかはぜひ押さえておきたいものです。ただ業界が違っても、”見る人にわかりやすい図面を制作することが大切”といったポイントは変わりません。