一級建築士の仕事内容とは?受験資格、難易度、年収も紹介
将来的に建築士として活躍したいと考えているものの、「一級建築士の資格を取得するかどうか迷っている」「二級建築士でも良いのではないかと思っている」という方もいるのではないでしょうか? 今回は、一級建築士の仕事内容や、考えられる勤務先、資格を取ることのメリットなどをご紹介します。一級建築士試験の受験資格や難易度も紹介するので、資格の取得を考えている方は、ぜひご覧ください。
一級建築士の仕事内容とは?
まずは、一級建築士の仕事内容をご紹介します。
一級建築士の主な仕事は設計と工事監理
一級建築士に限らず、建築士の主な仕事内容は「設計」と「工事監理」です。二級建築士や木造建築士は、建築物の構造、高さ、延べ面積などで対応できる範囲が制限されていますが、一級建築士の場合、制限がありません。
以下は、一級建築士が設計・工事監理できる範囲を示した表です。
一級建築士が設計・工事監理できる範囲
ご覧のように、一級建築士はすべての建築物を取り扱うことができます。二級建築士や木造建築士には扱えない、以下のような建築物を取り扱うことができます。
▼一級建築士にしか扱えない建築物(例)
・延べ面積が500㎡を超える一部の木造建築物 (学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場、百貨店など)
・延べ面積が300㎡を超え、高さ13mまたは軒高9mを超える、以下の構造の建築物 (鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造)
二級建築士・木造建築士との違い
上述したように、一級建築士が設計・工事監理できる建築物には制限がありませんが、二級建築士や木造建築士には制限があります。
例えば、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で、かつ延べ面積が300㎡を超える建築物の設計・工事監理は、二級建築士や木造建築士には認められていない業務範囲です。
二級建築士・木造建築士と一級建築士の違いをひと言で表せば、「大規模な建築物を取り扱えるかどうか」と言えるでしょう。業務範囲が大きく広がるぶん、一級建築士には豊富な経験や知識、高度なスキルが求められます。
二級建築士の仕事内容について詳しく知りたい方は、「二級建築士の仕事内容とは?年収や受験資格も紹介」をご覧ください。
一級建築士の勤務先は?
一級建築士が働く場所としては、以下の勤務先が考えられます。
設計事務所
一口に設計事務所と言っても、小さな個人事務所から全国展開の大きな事務所まで、その規模はさまざまです。また、デザインに強いアトリエ系事務所や、大規模施設の設計に強い事務所など、設計事務所ごとに異なった特色があります。一級建築士は大規模商業施設の設計など、大型プロジェクトで活躍することができます。
ゼネコン
ゼネコンにもいくつかの種類(スーパーゼネコン、大手ゼネコン、準大手ゼネコン、中堅ゼネコンなど)があります。大規模建築物の設計・施工業務を請け負うゼネコンにとって、幅広い知識とスキルを持つ一級建築士は、なくてはならない存在と言えるでしょう。
ハウスメーカー
主に戸建住宅の設計や販売を行うイメージがありますが、ハウスメーカーによっては規模の大きい建築物(マンションやアパートなど)を扱います。このようなハウスメーカーでは、あらゆる建築物に対応できる一級建築士が特に重宝されます。
ディベロッパー
大規模な商業施設やオフィスビルなどの開発を行うディベロッパーは、上述したゼネコンに発注する立場でもあります。そのためディベロッパーの一級建築士は、設計だけでなく、工事監理の面でも重要な役割を担います。
その他
他にも、官公庁や地域密着型の工務店など、一級建築士の勤務先は多岐にわたります。
また、独立してフリーランスとして働いたり、自ら事務所を立ち上げるという働き方もあります。
一級建築士の独立について知りたい方は、「一級建築士として独立するなら知っておきたいこと」をご覧ください。
一級建築士になるメリットは?
一級建築士の資格を取得するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
仕事の幅が大きく広がる
繰り返しになりますが、二級建築士や木造建築士とは異なり、一級建築士は設計・工事監理できる建築物に制限がありません。商業施設や学校、病院などの大規模な建築物に携われるようになるため、仕事の幅が大きく広がります。
転職や就職がしやすくなる
一級建築士の資格を取得しているということは、豊富な経験やスキルを持っているという証です。大規模建築物の設計・工事監理を行うことは、一級建築士以外には法的に認められていないため、大きなプロジェクトを扱う企業への転職・就職が有利になると言えます。
昇給や昇格が期待できる
一級建築士の資格を取得すると、一般的に資格手当が支給されるようになります。また、一級建築士として携わった仕事が評価されれば、組織の重要なポジションを任せられることも期待できます。
構造設計一級建築士や設備設計一級建築士が目指せる
一級建築士として構造設計の業務に5年以上従事すると、構造設計一級建築士の受験資格が得られます。同様に、一級建築士として設備設計の業務に5年以上従事すると設備設計一級建築士を受験することができるようになります。構造設計一級建築士と設備設計一級建築士は、それぞれ建築物の構造設計と設備設計のプロフェッショナルです。これらの資格を取得すれば、建築士としてさらに専門性の高い仕事に携わることができます。
一級建築士の年収はどれくらい?
一級建築士はどれくらいの給与をもらえるのでしょうか?
以下の表は、政府が公表している賃金構造基本統計調査から、一級建築士と産業計(全産業の合計)の数値を抽出したものです。
「一級建築士」と「産業計」の給与比較
※平成30年賃金構造基本統計調査「職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」および「年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」を元に作成。
一級建築士の給与額は、男女計、男、女のいずれにおいても産業計を上回っていることが分かります。
「きまって支給する現金給与額」を月給、「年間賞与その他特別給与額」をボーナスと捉えると、一級建築士の年収は以下のように算出できました。
▼一級建築士の年収(男女計)
44.94万円×12カ月+182.27万円=721.55万円
産業計を同様に計算すると「497.2万円」になるので、200万円以上もの差があることが分かります。
一級建築士の給与額は平均よりもだいぶ高いと言えそうですが、勤務先の条件や業務内容によって金額は異なります。具体的な業務内容や給与額を知りたい方は、実際の求人情報をチェックすることをおすすめします。
一級建築士の受験資格や試験の難易度は?
最後に、一級建築士の受験資格、試験内容、難易度について説明します。
受験資格について
一級建築士試験を受験するには、建築士法第14条で定められている学歴要件(建築に関する学歴又は資格など)と、実務経験要件(建築実務の経験年数)を満たす必要があります。
一級建築士の受験資格
※1 二級建築士としての実務経験年数は、二級建築士免許証に記載のある登録年月日から4年以上
※2 建築設備士としての実務経験年数は、合格(受講)証書に記載のある合格(修了)年月日から4年以上
上記の表から分かるように、一級建築士の受験資格を得る方法は「学歴を満たして実務経験を積む」か、「二級建築士や建築設備士の資格を取得して実務経験を積む」のいずれかになります。
なお、平成20年度以前に所定の学校へ入学した人と、平成21年度以降に入学した人とでは、学歴要件が異なるため注意が必要です。前者には「建築士法」による受験資格が適用され、後者には平成20年に施行された「改正建築士法」による受験資格が適用されるためです。
学歴要件を満たせているかどうかは、建築技術教育普及センターのホームページで確認するか、学校に直接問い合わせるなどして確認しましょう。
試験内容について
二級建築士や木造建築士の試験と同様に、一級建築士試験も「学科の試験」と「設計製図の試験」によって構成されています。学科の試験に合格しなければ、設計製図の試験を受けることはできません。
一級建築士の試験内容の概要は、以下の表が示すとおりです。
一級建築士試験の出題科目や出題数
一級建築士試験の難易度
一級建築士試験の合格率は、決して高くはありません。以下の表は、2016~2018年までの3年間の、一級建築士試験の合格率の推移を示したものです。
上記の表から見て取れるように、一級建築士試験の合格率は10%強しかありません。二級建築士の2018年における総合合格率が25.5%だったので、一級建築士試験の難易度がいかに高いかが分かります。
直近3年間の一級建築士試験の受験者数と合格率
二級建築士の試験内容や難易度、仕事内容についても知りたい方は、「二級建築士の仕事内容とは?年収や受験資格も紹介」をご覧ください。
オールウェイズは一級建築士を目指す人を応援しています。
一級建築士の資格を持っていることは、クライアントや勤務先からの評価や信頼の獲得につながります。
資格を取得することは簡単ではありませんが、建築や建設の業界でこれからスキルアップしていきたいと考えている方には、ぜひ目指してほしい目標の一つです。
オールウェイズは「資格取得サポート」や「キャリアアップ支援制度」などを通じて、一級建築士資格の取得を支援しています。
将来的に一級建築士の取得を考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。