CAD利用技術者試験って? 難易度、勉強方法など総まとめ
CADシステムについて基本的な知識から実技まで学ぶことができるCAD利用技術者試験。2次元CAD・3次元CADはもちろん、建築・機械・トレースなどの分野に特化した試験を受けることも可能です。ここではCAD利用技術者試験を受験するための基本情報や勉強方法などを紹介します。
CADオペレーターを目指すなら受けておきたいCAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、CADに関する知識やスキルを明確化して評価するための試験です。主にこれからCADを勉強する人や、設計・製図業務に携わりCADシステムを利用する人向けに行われます。
CAD利用技術者試験は、どんな仕事に役立つ?
CADシステムは建築・土木・機械・電気業界で広く活用されてきましたが、最近ではアパレルメーカーでも導入する企業が増えています。
CADシステムを扱う職業には、具体的にはCADオペレーターや機械・自動車メーカーの設計技術者、インテリアコーディネーター、アパレルメーカーのパタンナーなどがあります。
上記に挙げた職業は個人のスキルが重視される傾向にあり、どの業界でも即戦力の人材が求められています。そのため、資格を持っていれば必ずしも就職で有利になるとは限りません。しかし、資格取得のためにスキルを磨くことは必ず自身の力になりますし、自己PRの材料としてアピールすることも可能です。
CAD利用技術者試験の試験内容・合格基準・費用など概要まとめ
CAD利用技術者試験には、下記の種類があります。
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
- 2次元CAD利用技術者試験1級(建築)、1級(機械)、1級(トレース)、2級
- 3次元CAD利用技術者試験1級、準1級、2級
CAD利用技術者試験の入門編といえるのが「2次元CAD利用技術者試験基礎」です。そこから「2次元CAD利用技術者試験」の2級・1級に進みます。また、2次元CAD利用技術者試験は1級になると建築・機械・トレースの3つの専門分野に分かれます。
3次元CAD利用技術者試験は2級・準1級・1級があり、主に機械系・製造系の3次元CADシステムに関する知識や技術を問う試験です。建築、機械など複数の分野があるため、自分の職業に適した資格を選びましょう。
合格率はそれぞれ異なりますが、例えば「2次元CAD利用技術者試験基礎」では例年60~70%で推移しています。1級などの難しい試験になると受験者数も少なくなり、合格率も低くなっています。
各試験の合格率
2次元CAD利用技術者試験基礎
2次元CAD利用技術者試験基礎は、CADシステムの基本的な知識を問う試験です。CADシステムの初心者や専門学校生など、これからCADについて本格的に学びたいと考えている人に最適です。
- 受験資格
- 特になし
- 試験時間
- 50分
- 試験内容
- CADシステムの基礎知識と利用、CADを動作させるコンピュータシステム、ネットワークの基礎知識、情報セキュリティと知的財産、製図の基礎、図形の基礎
- 合格ライン
- 7割以上の正解
- 受験料
- 4,000円+消費税
2次元CAD利用技術者試験2級
2次元CAD利用技術者試験2級は、半年以上CADシステムについて学んでいる人や、CADシステムを利用した業務に従事する人を想定した試験です。設計事務所・メーカーの営業やCADオペレーター、CADインストラクターを目指す人に役立つ資格です。
- 受験資格
- 特になし
- 試験時間
- 60分
- 試験内容
- (1)CADシステム分野
CADシステムの概要や基本機能、CADシステムの運用と管理について、ハードウェアとソフトウェア、情報セキュリティと知的財産、3次元CADの基礎知識
(2)製図分野
製図一般、製図の原理と表現方法、製図における図形の表現方法
- 合格ライン
- CADシステム・製図の各分野で5割以上、および総合が7割以上の正解
- 受験料
- 5,500円+消費税
2次元CAD利用技術者試験1級
2次元CAD利用技術者試験1級は、機械・建築・トレースの3種類があります。機械・建築の試験はその分野の設計者やオペレーターを目指す人に最適な試験です。トレースの試験はCADオペレーターを目指す人が取得すると役立ちます。
- 受験資格
- 2級有資格者および過去の1級合格者に限る
- 試験時間
- 80分
- 試験内容
- 受験する試験によって出題内容は異なるが、どれも実技試験と筆記試験が行われる。出題比率は3種類とも共通して実技試験:75% 筆記試験:25%。
- 合格ライン
- 実技試験・筆記試験が各5割以上、および総合が7割以上の正解
- 受験料
- 15,000円+消費税(過去の1級合格者:10,000円+消費税)
- 注意事項
- 事前に解答枠のダウンロードを行うこと(行っていない場合は採点対象外となる。また当日の提供も行われないので注意)。
3次元CAD利用技術者試験
3次元CAD利用技術者試験には、1級・準1級・2級があります。試験内容は、主に機械系・製造系の3次元CADシステムを利用する業務を想定しています。自動車・機械メーカーの設計者やオペレーターを目指す人に最適な資格です。
- 受験資格
- <2級>特になし
<準1級・1級>2級有資格者/2級との併願受験も可能
- 試験時間
- <2級>60分
<準1級・1級>120分
- 試験内容
- <2級>
3次元CADの概念、3次元CADの機能と実用的モデリング手法、3次元CADデータの管理と周辺知識、3次元CADデータの活用
<準1級>
CADリテラシー問題、空間把握能力問題、2次元図面からの作図能力問題
<1級>
CADリテラシー問題、空間把握能力問題、部品組立て能力問題、2次元図面からの作図能力問題
- 合格ライン
- 各分野5割以上、および総合7割以上の正解
- 受験料
- <2級>
7,000円+消費税
<準1級>
10,000円+消費税(2級との併願受験:15,000円+消費税)
<1級>
15,000円+消費税(2級との併願受験:20,000円+消費税)
試験申し込みから受験、合格までのスケジュール
CAD利用技術者試験は、試験の種類ごとに試験日程が異なります。申込みは試験の1~2カ月前から開始され、合格発表は試験の1~2カ月後に行われます。
試験日程
2次元CAD利用技術者試験基礎/2級は随時実施しています。また、結果は試験終了後に即時発表されます。
そのほかの試験は年度ごとに前期・後期があり、申込期間も限られています。申込みの際はCAD利用技術者試験の公式サイトで必ず詳細を確認してください。
2次元CAD利用技術者試験 1級(機械/建築/トレース)
- 申込期間
- 前期:4月上旬~5月中旬頃
後期:8月下旬~9月下旬頃
- 試験日程
- 前期:6月中旬頃
後期:11月中旬頃
- 合格発表
- 前期:8月中旬頃頃
後期:1月下旬頃
3次元CAD利用技術者試験
- 申込期間
- 前期:5月上旬~6月上旬頃
後期:10月上旬~11月上旬頃
- 試験日程
- 前期:7月中旬頃
後期:12月中旬頃
- 合格発表
- 前期:8月下旬頃
後期:1月下旬頃
受験地
試験は基本的に全国の主要都市に設けられる試験会場で受験します。
2次元CAD利用技術者試験基礎のみ、IBT試験(インターネットに接続したPC環境での試験)方式を取っているため、パソコンがインターネットに接続された環境ならどこでも受験が可能です。指定の学校・企業や受験者が任意で選択した自宅・ネットカフェなどで受験できます。
CAD利用技術者試験の勉強法や参考書選び
CADの技術は専門学校や通信教育で学ぶ人がほとんどですが、独学も可能です。自治体が行う職業訓練校で学べる場合もあります。
専門学校や通信教育は費用が発生しますが、ポイントを押さえて効率的に学ぶことができます。独学は費用を節約できますが、人によってはモチベーションを保つのが難しいかもしれません。職業訓練は費用を抑えて基礎を学ぶことができますが、受講できる資格が限られています。自身の状況に合わせて、最適な勉強方法を選びましょう。
独学する場合はパソコンとCADソフトを用意する
CADについて独学する場合は、パソコンとCADソフトが必要です。パソコンはデスクトップ型・ノート型どちらでも構いませんが、CADを操作するため必ずマウスを用意します。
CADソフトについては有料・無料問わずさまざまな種類があります。無料ソフトではJw_cad(2次元CAD)、FreeCAD(3次元CAD)などが有名です。有料ソフトではAutoCADが代表的ですが、購入には数十万円単位の費用が発生します。無料ソフトでも試験のための基本機能は十分に備わっていますから、初心者であればまず無料ソフトを試してみましょう。本格的なソフトは業務などで必要になってから用意しても遅くありません。
無料ソフトについて詳しく知りたい方は、「決定版! 高機能な2次元・3次元のCADフリーソフトまとめ」をご覧ください。
公式ガイドブックが必須
独学で学ぶ場合、勉強の基本となるのは一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)から出ている公式ガイドブックです。試験の種類に合わせて下記の4冊が出版されています。
- 2次元2級・基礎公式ガイドブック
- 2次元1級(建築)公式ガイドブック
- 2次元1級(機械)公式ガイドブック
- 3次元公式ガイドブック
試験内容は公式ガイドブックに準拠しているため、出題傾向を掴むためにも公式ガイドブックは最適です。試験では実務であまり扱わない内容も出題されますが、その部分についても網羅しているので安心でしょう。巻末付録には用語集も付属しています。
公式ガイドブックの解説は、CADを扱う仕事をしている人であれば、概ね理解できるレベルです。しかし、「CADに関する知識がゼロでこれから学びたい」という人には、解説が不十分と感じられる場合もあります。参考書で知識を補うなどの対策が必要です。
独学でCAD利用技術者試験を受ける人必見! 参考書の選び方
公式ガイドブックと参考書や問題集を併用すると、学習内容の定着に役立ちます。CAD利用技術者試験には、各出版社からさまざまな参考書が販売されています。
参考書を選ぶ場合は、なるべくメジャーなシリーズを選ぶと良いでしょう。何度も改訂が重ねられている参考書はロングセラーですから、受験者からの支持も高いといえます。本屋で実際に参考書を手に取り、内容の充実度や解説の分かりやすさを確かめることも大切です。
なお、使用する参考書は1冊、多くても数冊に絞りましょう。多くの参考書を中途半端に読み込んでも、なかなか知識は身に付きません。基本的な知識を学んだところで過去問題集に取り組み、出題形式や傾向を把握します。何度も問題を解いて、制限時間内に解答できるように練習しましょう。
対策講座を受講する
多少の費用がかかっても、効率的に勉強したいという方におすすめなのが試験対策講座です。講座にはスクールに通う通学講座と、自分のペースで学べる通信講座があります。
通学講座の場合、費用は平均6~10万円程度です。独学に比べてお金はかかりますが、パソコンやCADソフトを一から揃えるよりは安く済ませることができます。もし家にパソコンがない場合は、講座を活用すると独学よりも安価で効率的に資格を取得できるかもしれません。
参考書を選ぶ場合は、なるべくメジャーなシリーズを選ぶと良いでしょう。何度も改訂が重ねられている参考書はロングセラーですから、受験者からの支持も高いといえます。本屋で実際に参考書を手に取り、内容の充実度や解説の分かりやすさを確かめることも大切です。
仕事や育児で忙しく、決まった時間に受講することが難しい人は、通信講座を活用する方法もあります。下記に一例を挙げますが、教材や費用は講座によって異なるため、複数の講座を比較・検討する必要があります。
通学講座の一例
CAD利用技術者試験 1級+2級(機械)対策(Winスクール)
- 受講費用
- 98,000円
- 学習時間
- 150分×10回(25時間)
- 受講期間
- 3カ月
通信講座の一例
CAD利用技術者基礎1・2級取得コース(諒設計アーキテクトラーニング)
- 受講費用
- 105,000円
- 受講期間
- 3~6カ月未満
ほかにもあるCAD関連試験
CADに関連する資格は、CAD利用技術者試験のほかにも建築CAD検定試験やCAD実務キャリア認定制度などがあります。それぞれ専門とする分野が異なりますから、現在の業務や目指す職種に合わせて受験を検討しましょう。
建築CAD検定試験
建築CAD検定試験は、一般社団法人 全国建築CAD連盟が行っている試験です。「2次元CAD利用技術者試験1級(建築)」とは異なりますから注意してください。
建築CAD検定試験に特別な受験資格や条件はありません。初めてでも、級を問わずに受験できます。試験は准1級から4級まであり、すべての級で実技試験が行われます。一般受験と団体受験があり、4級は高校生の団体のみ受験が可能です。
- 認定団体
- 一般社団法人 全国建築CAD連盟
- 受験資格
- 特になし
- 受験費用
- 准1級:14,400円 2~3級:10,300円 4級:3,100円
(2・3級を併願した場合は合わせて16,500円)
- 試験内容
- CADシステムを用いたトレースや作図を行う。すべての級で実技試験を実施。
CAD実務キャリア認定制度
CAD実務キャリア認定制度は、NPO法人 コンピューターキャリア教育振興会と日本学び協会が主催するCADの実務的な技術や技能を認定する制度です。業務でCADを利用する人や学校でCADを学んでいる人を対象としています。
試験には3次元CADトレーサー認定試験、3次元CADアドミニストレーター認定試験、CADアドミニストレーター認定試験の3種類があります。
一般受験者は自宅のパソコンで試験を受けます。内容は実技試験のみで、試験中に参考書などを見ても構いません。
- 認定団体
- 主催:NPO 法人コンピュータキャリア教育振興会・日本学び協会
実施:CAD検定協会
- 受験資格
- 特になし
- 受験費用
- 3次元CADトレーサー認定試験
一般受験者:13,400円 学生割引:9,300円
3次元CADアドミニストレーター認定試験
一般受験者:10,300円 学生割引:6,200円
CADアドミニストレーター認定試験
一般受験者:7,200円 学生割引:5,200円
- 試験内容
- 試験は実技試験のみ。試験中に参考書などを見ても問題ない。
オートデスク認定資格プログラム
オートデスク認定資格プログラムは、オートデスク製品の知識や操作技術を評価する試験です。全世界共通で実施されており、海外でも試験を受けられます。
日本では、オートデスク製品を扱う職種を志望する人や学生を対象とした「オートデスク認定ユーザー試験」と、オートデスクに関する高度なスキルを修得する「オートデスク認定プロフェッショナル試験」の2種類が実施されています。試験によって扱う製品や内容も大幅に異なります。
- 認定団体
- オートデスク認定資格事務局
- 受験資格
- <プロフェッショナル>
明確な条件はないが、オートデスク認定ユーザー資格保持者および 400 時間以上の製品使用経験がある人を推奨。
<ユーザー>
最新コースおよび 50 時間の実際の製品の使用経験がある人を推奨。
- 受験費用
- 各オートデスク認定試験センター(ACC)に要問合せ
- 試験内容
- 選択問題と、実際のソフトウェアを操作して解答する実技形式で行われる。
CAD利用技術者試験を受けてスキルを磨こう
CADに関する資格にはさまざまなものがあり、その代表ともいえるのがCAD利用技術者試験です。仕事に生かせる資格を取得しておくことで、就職・転職時のアピールにつながります。
しかし、CADオペレーターや設計技術者などは、テストの高得点よりも現場の技術が評価される仕事。幅広い業界でCADシステムの導入が進む中で、即戦力の人材が重宝されています。
合格だけを目標にせずその先を見据え、あくまでも自分の能力を高めるための手段として試験を活用すると良いでしょう。